大阪・関西万博で2日、石川県珠洲市の伝統工芸品「珠洲焼」の展示と販売が始まった。国外からの来訪者も多い万博で、作家らは「珠洲焼の、そして珠洲の魅力を知ってもらいたい」と力を込める。
珠洲焼は、鉄分を多く含む珠洲の土を高温で焼いて作られる。溶けた灰が自然のうわぐすりとなることで現れる灰黒色のツヤが特徴で、使い込むほどに味が出てくるという。平安時代末期に作られ始めたが、一度生産が途絶え、昭和になってから生産が復活したとされる。
能登半島地震では、市内にある約20の窯全てが、被害を受けた。まだ窯を復旧できていない作家も多く、今回は市内の窯で共同焼成した作品を含め、珠洲焼作家の5人の作品約260点を展示・販売する。
珠洲焼を始めて30年の鍛冶ちえみさん(61)は、窯だけでなく自宅も損壊。作品に向き合えるようになったのは1年ほどが経ってからだったという。大阪・関西万博での展示販売の話を聞いた時は「世界中から来た人は、私の作品を見て、どう思うんだろうと考えました。これはチャンスだなと思った」と振り返る。
企画した「宙と土」の高屋典子さん(60)は「独立して自分の窯を持つ窯元として活動している若手にお願いして実現した。この世代に珠洲焼の復興を引っ張っていってほしい」と話した。
万博のEXPOメッセWASSEに出展している。6日まで。詳細は宙と土のホームページ(https://whynot.tokyo/pages/suzu)。